1. 子どもが嘘をつくのは普通?年齢別の嘘のメカニズム
「うちの子、嘘をつくようになったけれど、これって普通のことなの?」
と不安に感じる保護者の方は少なくありません。
実は、子どもが嘘をつくことは、成長の過程で自然に見られる現象であり、年齢によってその理由や背景にある心理は大きく異なります。
嘘をつく行為は、子どもの認知能力や社会性の発達と密接に関わっているのです。
ここでは、年齢別に異なる子どもの嘘のメカニズムを深く掘り下げていきます。
1.1 幼児期に見られる嘘の特徴と心理
幼児期、特に3歳から5歳頃の子どもたちが見せる嘘は、大人からすると驚くようなものかもしれません。
しかし、この時期の嘘の多くは、悪意や意図的な欺瞞とは異なります。主な特徴と心理は以下の通りです。
- ファンタジーと現実の混同:幼児はまだ現実と空想の区別が曖昧です。
「大きな犬が追いかけてきた」といった話も、本人は事実だと信じ込んでいることがあります。
これは豊かな想像力の表れであり、成長とともに区別がつくようになります。 - 願望が先行する嘘:欲しいものやしてほしいことが強く、それが現実であるかのように話してしまうことがあります。
「おもちゃを片付けたよ」と言っても、実際には片付けていないなど、自分の願望が先行して言葉になるケースです。 - 叱られたくない気持ち:失敗や間違いを隠すために嘘をつくこともあります。
これは、親に叱られたくないという素朴な自己防衛の気持ちからくるもので、まだ嘘の善悪を深く理解しているわけではありません。
この時期の嘘は、子どもの発達段階における自然なプロセスと捉えることが重要です。
嘘をついたこと自体を厳しく責めるのではなく、その背景にある子どもの気持ちや発達段階を理解しようと努めることが大切です。
1.2 小学生の嘘 その背景にある心の動き
小学生になると、子どもの嘘はより複雑な様相を呈してきます。
幼児期とは異なり、嘘をつくことの意味や、それが他者に与える影響を少しずつ理解し始めるためです。
小学生の嘘の背景には、以下のような心の動きが見られます。
嘘の種類 | 背景にある心理 |
自己防衛の嘘… | 失敗や叱責を避けたい |
注目を集める嘘… | 認められたい、関心を引きたい |
友達関係の嘘… | 仲間外れを恐れる、共感を求める |
親からの期待への嘘… | 期待に応えたい、失望させたくない |
特に「心の理論」の発達が進むにつれて、他者の視点や感情を推測し、その知識を利用して嘘をつくことができるようになります。
例えば、宿題をしていないことを隠すために「体調が悪かった」と嘘をつくのは、親が心配して追及しないだろうと予測する心理が働いている場合があります。
また、友達との関係が深まる中で、友達をかばうための嘘や、仲間意識からくる嘘をつくことも増えてきます。
この時期の嘘は、社会性の発達や自己肯定感の揺らぎと深く関連していることが多いです。
1.3 思春期の子どもが嘘をつく理由と親へのメッセージ
思春期は、子どもが精神的に大きく成長し、自立への道を歩み始める重要な時期です。
この時期の嘘は、より個人的で、複雑な感情が絡み合っていることが多いです。思春期の子どもが嘘をつく主な理由は以下の通りです。
- 自立心の芽生えとプライバシーの確保:親からの干渉を避け、自分の世界やプライベートな空間を守りたいという気持ちが強くなります。親に話したくないことや、自分で解決したい問題がある場合に嘘をつくことがあります。
- 親からの期待やプレッシャーからの逃避:学業や進路、友人関係など、親からの期待やプレッシャーを感じ、それに応えられない自分を隠すために嘘をつくことがあります。完璧な自分を演じようとする心理が働くこともあります。
- 仲間意識の重視:友人関係が人生の中心となり、仲間との絆を何よりも大切にします。友達との約束を優先したり、友達をかばったりするために、親に嘘をつくこともあります。
- 自己同一性の模索:自分は何者であるのか、将来どうなりたいのかといった自己同一性を模索する中で、不安定な感情や葛藤を抱え、それを隠すために嘘をつくことがあります。
思春期の子どもの嘘は、多くの場合、親への反抗や不信感からくるものではなく、複雑な心の成長過程で生じる葛藤の表れです。
この時期の親は、子どもが嘘をついたとしても、頭ごなしに叱るのではなく、まずは子どもの気持ちや状況を理解しようと努める姿勢が求められます。
オープンなコミュニケーションを心がけ、子どもが安心して本音を話せるような信頼関係を築くことが、何よりも重要となるでしょう。
2. 子どもの嘘を見抜くより大切なこと 親の正しい対処法

2.1 嘘を責めずに子どもの気持ちに寄り添う
子どもが嘘をついた時、親は驚きやショックから、つい厳しく叱ってしまいがちです。
しかし、頭ごなしに叱ったり、嘘の理由を問い詰めたりすることは逆効果となり、子どもはさらに嘘を重ねる可能性があります。まずは親が冷静に対応することが大切です。
嘘の背景には、「叱られたくない」「親の気を引きたい」「自分を守りたい」といった子どもの様々な心理が隠されていることが多いです。
そのため、嘘そのものを責めるのではなく、「どうしたの?」と優しく問いかけ、子どもの話に耳を傾け、その背景にある気持ちを理解しようと努めましょう。
子どもが正直に話しにくい状況だったことを汲み取り、「本当のことを言いにくかったんだね」と共感を示すことが重要です。
もし子どもが「怒られると思ったから」と答えたら、「そうか、怖かったんだね」と、その気持ちを受け止めてあげましょう。
このように共感的に接することで、子どもは「理解してもらえた」と感じ、次回からは正直に話しやすくなります。
親の気持ちを伝える際には、「嘘をつかれて悲しかった」のように、「私(I)」を主語にした「アイメッセージ」で伝えることで、子どもは自分の嘘が親にどのような影響を与えたかを自覚しやすくなります。
子どもの目を見て頷きながら話を聞く「アクティブリスニング」は、子どもが大切にされていると感じ、信頼関係を深める上で非常に有効なコミュニケーション方法です。
2.2 正直に話すことのメリットを伝えるコミュニケーション
子どもに「嘘はいけない」と伝えるだけでなく、正直に話すことの価値やメリットを具体的に教えることが重要です。
嘘をつくと問題解決に時間がかかったり、苦しい気持ちになったりすることを伝えましょう。
正直であることは、他者との信頼関係を築く上で不可欠な要素です。
親自身が日頃から自分の感情を正直に伝える姿を見せることも、子どもが感情の重要性を学び、オープンなコミュニケーションを育むきっかけとなります。
例えば、「今日は仕事が忙しくて少し疲れているんだ」といったように、親の素直な気持ちを伝えることで、子どもは感情表現の仕方を学びます。
子どもが嘘を告白し、正直に話してくれた際には、その勇気を認め、「正直に話してくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えましょう。
これにより、子どもは正直さが評価されることを学び、今後も真実を話すことへの抵抗感が少なくなります。
また、誰かを傷つけないための「白い嘘」と、自分の利益のための嘘は異なることを伝え、嘘にも種類があることを理解させることも大切です。
2.3 嘘をつかせない環境づくりとルール設定
子どもが嘘をつかなくても良いと感じられるような安心できる環境を整えることが、嘘を減らすための第一歩です。
親が厳しすぎたり、常に小言を言っていたりする家庭では、子どもは叱られることを恐れて嘘をつくことがあります。
親自身が子どもに対して嘘をつかないことも重要です。たとえ些細な嘘であっても、子どもは親の行動を見て学びます。
もし親が嘘をついてしまった場合は、正直に謝罪する姿勢を見せることが大切です。
家庭内のルールは、一方的に押し付けるのではなく、子どもと一緒に話し合って決めるようにしましょう。
子ども自身が納得して決めたルールは、守ろうとする意識が高まります。ルール設定においては、罰を与えることよりも、ルールを守れた時に褒める、または「トークンシステム」のようにポイントを貯めて報酬と交換する仕組みを導入するなど、ポジティブな行動を促す工夫が効果的です。
ルールを破った場合のペナルティも、その行為と関連性のあるものにすると、子どもは納得しやすくなります。
例えば、ゲームの時間を守れなかったら、ゲームの時間が減る、といった具合です。
日頃から子どもが安心して本音を話せるような信頼関係を築くためのコミュニケーションを心がけましょう。
2.4 嘘をついてしまった後のフォローアップ
子どもが嘘をついてしまった後、親の対応は今後の子どもの行動に大きく影響します。
嘘が発覚した際には、嘘そのものを責めるのではなく、なぜ嘘をつく必要があったのかという子どもの気持ちに寄り添い、背景を理解することに焦点を当てましょう。
子どもが嘘を認めたら、「やっぱり嘘をついていたんじゃない!」と指摘するのではなく、「そうだったんだ。教えてくれてありがとう」と、正直に話してくれたことに対して感謝の気持ちを伝えることが大切です。
これにより、子どもは今後も正直に話すことへの安心感を得られます。
次に、嘘をついた行為によって生じた結果について、子どもと一緒に考え、どうすれば良かったのかを話し合いましょう。
例えば、宿題の嘘であれば、今後の宿題の取り組み方について一緒に計画を立てるなど、具体的な解決策を模索します。
子どもが叱られるのを恐れて隠していたことを正直に話してくれた時には、「叱られるの怖いのに、ちゃんと言ったんだね」と、その勇気を認めてあげる一言が、子どもの自己肯定感を高め、信頼関係を深めることにつながります。
嘘をきっかけとして、親子関係を再構築し、より深い信頼関係を築くチャンスと捉えることが重要です。
3. 子どもの嘘が止まらないと感じたら 専門機関への相談も視野に
子どもの嘘は成長過程で一時的に見られることもありますが、その頻度や内容がエスカレートし、親の手に負えないと感じる場合には、専門機関への相談を検討することが重要です。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りることで、問題の根本的な解決につながることも少なくありません。
3.1 嘘が常習化している場合のチェックポイント
子どもがつく嘘が単なる一過性のものではなく、常習化していると感じる場合、いくつかの兆候が見られます。
これらのチェックポイントに当てはまる場合は、子どもの心に深いSOSが隠されている可能性も考慮し、慎重な対応が求められます。
- 嘘が自己防衛の手段になっている場合:子どもが叱責を過度に恐れ、「本当のことを言うと怒られる」という経験から、自分を守るために嘘を繰り返すようになることがあります。
一度嘘で切り抜けると、それが習慣化しやすい傾向にあります。 - 嘘の内容が深刻な場合:いじめや他者への加害、大きなトラブルを隠すための嘘は、特に注意が必要です。
これらの嘘は、子ども自身が困難な状況に直面しているサインである可能性があります。 - 嘘が人間関係や日常生活に支障をきたしている場合:嘘によって友達との関係が悪化したり、学校生活や家庭での信頼関係が著しく損なわれたりしている場合は、専門的な介入が必要となることがあります。
- 年齢や発達段階に見合わない頻繁な嘘:乳幼児期の空想的な嘘とは異なり、学童期以降に頻繁かつ意図的な嘘が繰り返される場合、子どもの心理状態や発達特性に目を向ける必要があります。
- 発達特性との関連が疑われる場合:注意欠如・多動症(ADHD)などの発達特性を持つ子どもは、自身の失敗の原因をうまく説明できなかったり、衝動的な行動をコントロールできなかったりするために、叱られることを避ける目的で嘘をつくことが常態化するケースもあります。
このような状況が続くようであれば、子どもの心の奥底にある「なぜ嘘をつくのか」という理由を理解し、適切なサポートを提供するために、外部の専門機関に相談することを検討しましょう。
3.2 どんな専門家に相談すべきか
子どもの嘘が常習化し、家庭での対応だけでは難しいと感じた場合、様々な専門機関や専門家がサポートを提供しています。
それぞれの専門性に応じて、適切な相談先を選ぶことが大切です。
相談先 | 相談内容・特徴 |
児童相談所 | 子どもの福祉に関する総合的な相談窓口です。 |
スクールカウンセラー | 学校に配置されている心理の専門家です。 |
公認心理師・臨床心理士 | 子どもの心理面の問題に特化した専門家です。 |
児童精神科医・心療内科医 | 子どもの心の病気や発達障害の診断、治療を行う医師です。 |
保健センター | 地域の子育て支援の一環として、子どもの発達や行動に関する相談を受け付けています。 |
発達障害者支援センター | 発達障害の診断を受けている、またはその疑いがある子どもと家族に対して、専門的な情報提供や相談、支援計画の作成などを行います。 |
これらの機関の多くは、初回相談を無料で行っている場合があります。
気になることがあれば、まずは気軽に相談してみることが、問題解決への第一歩となります。
専門家は、子どもの嘘を「悪いこと」と決めつけるのではなく、その背景にある子どもの思いや困難を理解しようと努め、適切な支援策を共に考えてくれるでしょう。
4. まとめ
子どもの嘘は、成長過程における心の葛藤や親へのSOSであることが多く、年齢によってその背景は異なります。
大切なのは、嘘を見抜くことよりも、子どもがなぜ嘘をついたのか、その心の動きに寄り添い、理解しようと努めることです。
正直に話せる安心できる環境を家庭内に作り、信頼関係を築くことが、子どもが自ら真実を語る第一歩。
もし嘘が常習化し、親だけでは対応が難しいと感じたら、児童相談所や小児科、心療内科などの専門機関へ相談することもためらわず、子どもの健やかな成長をサポートしていきましょう。



