
【企業インタビュー】株式会社キッカケ ママファースト羽田宗一郎様
【企業インタビュー】株式会社キッカケ ママファースト羽田宗一郎様
子育てと仕事の両立は、気合いだけで乗り切れるものではありません。
時間の制約がある。急な予定変更もある。外に出て働きたくても難しい日がある……。
そんな現実の中で、キャリアを諦めずに前に進もうとしているママたちに、今どんな環境が必要なのか。この問いに向き合い続けているのが、株式会社キッカケが運営するコミュニティ「ママファースト」です。
ママファーストは、子育て中のママと企業をつなぎ、ママが力を発揮できる働き方を広げていくコミュニティ。現在は約700人のママと、およそ20社のスポンサー企業が関わる場へと成長しています。
今回、ママカレッジ編集部は代表の羽田宗一郎さんにお話を伺う機会をいただきました。ママファーストが生まれた背景、どんな支援をしているのか、そしてこれからどこを目指していくのか。羽田さんの熱い想いとともに、整理してお伝えします。
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キャリア支援の会社が、なぜママ支援へ舵を切ったのか
株式会社キッカケは、もともと20代〜30代の男性を中心としたキャリア支援からスタートした会社です。 そこから大きく方向転換するきっかけになったのは、羽田さんご自身のライフステージの変化でした。現在は4歳になる息子さんの子育てをしながら働く日々の中で、仕事との向き合い方が大きく変わっていったと言います。
さらに、その前段には深い原体験がありました。約10年前、お父様が交通事故に遭われ、羽田さんご本人とお母様、そして奥様の3人で介護を担う生活が始まったのです。
介護をしながら働くという状況は、想像以上に過酷なものです。これまでのように外に出て人と会い、食事をしながら営業するような働き方は難しくなります。その中で羽田さんは、かなり早い段階からオンラインやSNSを活用した働き方にシフトしていったといいます。
そして、子どもが生まれたことで、ある大きな気づきがありました。 「介護と仕事の両立で自分自身も大変だと思っていたけれど、ママたちはそれを特別なことではなく、日常として引き受けながらキャリアも考えなければならない。その現実の重さに、強い当事者意識をもって気づかされた」と羽田さんは振り返ります。
この経験から、ママたちを応援しながら一緒に学び、経済的な自立にもつながる仕組みをつくれないか――そう考えて始まったのが、今の「ママファースト」です。
ママファーストが目指していること
ママファーストの軸にあるのは、単なる仕事紹介ではありません。 キャリアに悩むママたちと、課題を抱える中小企業をつなぎ、双方にとって意味のある関係をつくることです。
イメージとしては、このような循環です。
ママが企業の課題解決に関わる
企業はママの働き方や事情を理解した上で仕事を提供する
その結果、ママのキャリア形成と企業の成長が両立する
一方だけが得をする仕組みではなく、ママと企業が支え合う「双方向のモデル」をつくろうとしている点が、ママファーストの大きな特徴です。
ママファーストの強みは「働きやすさの前提」が共有されていること
小さな子どもがいると、働ける時間も場所も限られます。 毎日決まった時間に出勤するのが難しいこともあれば、急な発熱や予定変更で思うように動けないこともあります。これは本人のやる気や能力の問題ではなく、生活の構造上、どうしても自由度が下がってしまうためです。
ママファーストでは、そうした事情を企業側が「あらかじめ理解した上で」関わっているのが最大のポイントです。 スポンサー企業からは、たとえば次のような仕事や環境が提供されています。
すきま時間を活用しやすい仕事
在宅で進められる仕事
地元から大きく離れずに取り組める仕事
柔軟な働き方を前提にした業務設計
この「理解がある状態」からスタートできることは、実はとても大きな救いです。 子育て中のママが仕事を探すとき、本当にしんどいのは、仕事そのものよりも「自分の事情を説明して、理解してもらうまでのプロセス」だったりします。ママファーストでは、その前提がすでに共有されているからこそ、安心して一歩を踏み出しやすい環境が整っています。
どんなママが参加しているのか
ママファーストには、主に12歳以下のお子さんを持つママが参加しています。その中でも特に多いのが「育休中」のママだそうです。
これはとても自然な流れかもしれません。これまでフルタイムや正社員として一線で働いていた人ほど、出産後にキャリアの優先順位が大きく変わります。 「これからどう働くのか」「以前と同じように働けるのか」「働きたい気持ちはあるけれど、家庭との両立はどうすればいいのか」……そんな不安や迷いが一番強くなるタイミングが、まさに育休中。だからこそ、これからの働き方を模索するためにママファーストに関心を持つ方が多いといいます。
もちろん参加層は幅広く、ほかにも以下のような方々が集まっています。
パートやアルバイトをしながら、今後のキャリアを真剣に考えたいママ
経済面の不安を抱えるシングルマザー
子育てを最優先にしつつ、少しずつ社会復帰・仕事に再挑戦したいママ
共通しているのは、「働く意欲があるのに、従来の枠組み(固定された時間や場所)にははまりにくい」ということ。だからこそ、彼女たちには柔軟な選択肢が必要なのです。
ママのキャリアに必要なのは、能力よりも「続けられる環境」
ママ支援というと、スキルアップや資格取得、学び直しが注目されがちです。もちろんそれも大切ですが、羽田さんは「その前に必要なのは、学びや仕事を『続けられる環境』です」ときっぱり語ります。
子育て中は、集中できる時間が細切れになります。予定通りにいかないことの連続で、周囲の理解がないとすぐに限界を迎えてしまいます。 ママファーストがやろうとしているのは、まさにその「土台づくり」です。
在宅でできる、合間で進められる、無理なく続けられる。そんな条件がそろって初めて、学びも仕事も現実的なものになります。キャリアは理想論だけでは築けません。日々の生活に沿った形で無理なく積み上げられることこそが重要なのです。
これからの挑戦。700人から、もっと大きなうねりへ
今後の展望として羽田さんが熱く語ってくださったのは、このコミュニティをさらに大きく育てていくことです。 現在は約700人のママが参加していますが、まずは1000人、その先は3000人、1万人へと、かなり大きな規模の成長を見据えています。
なぜ、そこまで規模にこだわるのでしょうか。 理由はシンプルで、「関わるママと企業が増えるほど、社会に与えられる影響(インパクト)が大きくなるから」です。
ママファーストのようなコミュニティが広がれば、社会全体の「ママの働き方に対する理解」が進み、企業側の受け入れ体制も変わっていく可能性があります。 その象徴として掲げているのが、「2030年までに東京ドームでママファーストのイベントを開催する」という目標です。
一見すると壮大な夢に聞こえますが、そこには明確な意図があります。 ママたちのコミュニティが東京ドームを埋めるほどの存在になれば、それだけで社会的な認知は圧倒的に高まります。企業やメディアを巻き込みながら発信していくことで、世の中のすべてのママたちのキャリアに、良い影響を与えられるかもしれない――。「ほんの少しでも社会を動かしたい」という羽田さんの視点は、非常に現実的でありながら、ワクワクするような力強さに満ちていました。
コミュニティ同士がつながる意味
ママのキャリアや働き方を支える取り組みは、ひとつの団体だけで完結するものではありません。 実際にママファーストでは、同じようにママの転機や学び直しに向き合う他のコミュニティとの連携にも、強い共感を示しています。
出産や育休、復職、働き方の見直しといった「人生の転換点」で悩むママに焦点を当てている活動には、多くの共通点があります。こうしたコミュニティ同士が競い合うのではなく、手を取り合い、つながりながら支え合うことで、ママたちに届けられる選択肢は確実に増えていくはずです。
育児も仕事も学びも、1人で抱え込まないことが大前提
インタビューの最後に、羽田さんからママたちへの応援メッセージをいただきました。その中で特に印象的だったのが、「育児も仕事も、絶対に1人でやるものではない」という言葉です。
羽田さんご自身は子どもを産んだ当事者ではありませんが、介護と育児を家庭の中で一緒に担ってきたからこそ、その大変さは痛いほど理解されています。数日間のワンオペ育児を経験しただけでも、その過酷さを強く実感したそうです。 育児は決して軽く見ていいものではありません。体力も気力も使い、思い通りにならないことの連続です。だからこそ必要なのは、「自分がもっと頑張ること」ではなく、「頼れる先を増やすこと」です。
パートナーに頼る
家族や周囲の人に頼る
外部のサービスやコミュニティを活用する
同じ悩みを持つ仲間とつながる
ママファーストのような場所が持つ本当の価値は、仕事の機会だけではありません。「自分だけが大変なわけじゃない」と思えること、困ったときに相談できる先があること、生活が思うようにいかない日があっても「みんな同じように試行錯誤しているんだ」と知れること。その安心感こそが、ママたちの心の支えになります。
ママにやさしい仕事を探すという選択
ママファーストでは、その時々の状況に合わせて、ママのライフスタイルにマッチした仕事が用意されています。 在宅で進められる仕事、短期間で取り組める仕事、生活に合わせやすい仕事など、一般的な求人サイトでは見つけにくい選択肢に出会える可能性があります。
「子育て中だから働けない」ではなく、「子育て中でも続けられる形で働く」。
この発想の転換こそが、これからのママのキャリアには欠かせません。
まとめ
ママファーストが大切にしているのは、ママに無理をさせることではなく、「ママが力を発揮できる条件」を社会の側に整えることです。 介護や育児のリアルな現実に向き合ってきた羽田さんだからこそ、働き方の制約を「甘え」として片付けない。そこに、この取り組みの深い誠実さを感じました。
もし今、子育てと仕事の間で立ち止まっていたり、これからのキャリアに不安を感じていたりするなら、どうか1人で抱え込まないでください。 「頼れる環境を見つけること」も、立派なキャリアの前進です。
ママたちの働き方は、もっと自由でいいし、もっと周りに支えられていい。ママファーストの挑戦は、そんな「当たり前」を社会に広げていく、あたたかくも力強い一歩だと感じます。






