
母子家庭の住まい探しに選択肢を。「マザーポート」が目指す親子のための居住支援を取材
「離婚後、子どもと暮らす家をどうしよう」
「仕事や収入が安定していない状態でも、部屋を借りられるのだろうか」
「子どもと安心して生活を立て直せる場所を見つけたい」
離婚前後など生活環境が大きく変わる時期、住まいの確保に不安を抱えるママもいます。
今回MamaCollegeが取材したのは、母子家庭に特化した不動産ポータルサイト「マザーポート」を運営する全国ひとり親居住支援機構です。
なぜ母子家庭に特化した住まいの情報が必要なのか。マザーポートが生まれた背景や、実際の居住支援から見えてきた課題、そして目指している社会について、代表理事の秋山様にお話を伺いました。
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母子家庭の住まい探しを支える「マザーポート」とは?
「マザーポート」は、母子家庭向けの住まいに特化した不動産ポータルサイトです。
掲載されているのは、シングルマザー向けのシェアハウスをはじめ、アパートや一戸建てなどさまざまなタイプの住まいです。
取材時点の最新レポートでは、掲載物件数は69件、部屋数は358室。一般的な賃貸物件の相場より、家賃が低く設定されている物件が多い傾向にあるといいます。
当初はシェアハウス型の物件が中心でしたが、現在はアパート型なども増えています。
秋山様が大切にしているのは、単純に「住める場所」を提供することだけではありません。
シェアハウスが合う家庭もあれば、一戸建てで親子だけで暮らしたい家庭もあります。
それぞれの家庭によって置かれている状況や希望は異なるからこそ、母親自身が自分たちに合った住まいを選べることが大切だと考えています。
「借りたいのに借りられない」。母子家庭が直面する住まいの壁
一般的な不動産サイトには数多くの賃貸物件が掲載されています。
しかし、母子家庭の場合、「物件があること」と「実際に借りられること」が必ずしも同じではないと秋山様は話します。
たとえば、離婚前まで専業主婦だった場合や、離婚調停中で仕事や収入が安定していない場合。これから新しい生活を始めるために家を借りたくても、収入面などから賃貸契約のハードルが高くなるケースがあります。
また取材では、母子家庭であることに対する偏見などから、大家や不動産会社に入居を断られるケースがあることについても語られました。
一方、公営住宅などの公的な支援制度についても、必要になったタイミングですぐに入居できるとは限りません。
生活を変えなければならないタイミングと、住まいを確保できるタイミングが一致しないこともあります。
「家を出たい。でも、その後に暮らす場所がない」
そんな状況が、次の生活へ進むことを難しくしてしまうことがあります。
だからこそ、母子家庭の事情を理解したうえで受け入れてくれる住まいの情報を集め、必要としている人へ届けることに意味があります。
始まりは2012年。シングルマザー専用シェアハウスから見えてきた課題

マザーポートの原点は、2012年に企画されたシングルマザー専用シェアハウスにあります。
秋山様はもともと建築設計の仕事に携わり、その中で掲げていた理念が、
「社会と人生に新しい選択肢を生み出す」
というものでした。
建築や住まいを通して、子育てと仕事の両立という社会課題に何かできないか。
そう考える中で、同じ想いを持つ不動産事業者との出会いがあり、シングルマザー専用シェアハウスの取り組みが始まりました。
しかし、実際に運営を始めてみると新たな課題が見えてきます。
母子家庭を受け入れたい物件があっても、その情報が必要としている人になかなか届かなかったのです。
一般的な不動産サイトでは、母子家庭向けの居住支援物件として探すことが難しい。一方、通常のシェアハウスを探すポータルサイトとも性質が異なります。
「住まいを必要としている人」と「受け入れたい事業者」がいるのに、両者が出会う場所がない。
そこで2015年にスタートしたのが、母子家庭の住まいに特化した「マザーポート」でした。
シェアハウスだけではない。「自分で選べる住まい」を増やしたい
シングルマザー向けの住まいと聞くと、シェアハウスをイメージする人もいるかもしれません。
しかし秋山様は、シェアハウスがすべての家庭にとって最適な住まいとは限らないと話します。
ほかの親子と生活空間を共有することに安心を感じる人もいれば、親子だけで生活できる環境を望む人もいます。
そのためマザーポートでは、シェアハウスだけでなく、アパートや一戸建てなども掲載しています。
一戸建てタイプについても、複数の母子家庭でシェアするのではなく、一つの家庭が一戸建てを借りる物件があります。
大切なのは、支援する側が「この住まいがいい」と決めることではなく、家庭の状況に合わせて選べる選択肢があること。
仕事、子どもの年齢、保育園や学校、周囲との関わり方など、暮らしに求めるものは家庭によって違います。
だからこそ、住まいにも複数の選択肢が必要なのです。
「ここがなければ今の自分はいない」住まいが生活を立て直す土台になる
長く居住支援に携わる中で、秋山様の印象に残っている光景があります。
最初に立ち上げたシングルマザー専用シェアハウスで暮らしていた、ある親子のエピソードです。
その家庭の子どもが、自宅に友達を連れてきたことがありました。
そして広い住まいを友達に見せながら、どこか誇らしそうにしていたそうです。
秋山様はその姿を見て、安全で清潔な住まいを持つことは、人が生活していくうえでとても重要なことだと改めて感じたといいます。
また、これまでの利用者からは、「ここがなければ今の自分はいない」といった声が寄せられたこともあるそうです。
一方で秋山様は、こうした居住支援を単純な美談として捉えるべきではないとも話します。
支援の現場では、住まいを用意すればそれで終わりではありません。さまざまな事情を抱えた入居者への伴走や、生活上のトラブルへの対応などが必要になるケースもあります。
民間の活動だけで支えるには、大きな負担を伴うのが現実です。
支援物件を増やすだけでは解決しない。居住支援を続ける難しさ
「必要としている人がいるのであれば、もっと物件を増やせばいい」
一見すると、そう考えられるかもしれません。
しかし、母子家庭向けの居住支援を継続することには、さまざまな難しさがあります。
秋山様によると、掲載されている支援物件は家賃を一般的な相場より抑えている傾向があります。
さらに、入居後の伴走支援が必要になる場合には、そのための人員や時間も必要です。
取材時点で、掲載物件全体の稼働率は約7割とのこと。家賃を抑えながら支援に必要な人員も確保するとなると、事業単体で十分な収益を上げることは簡単ではありません。
そのためマザーポートでは、単純に掲載物件数を増やすことだけを目的にはしていません。
新たに居住支援を始めたい事業者とは事前に面談を行い、実際の運営には難しさもあることを説明したうえで、それでも継続して取り組む意思があるかを確認しているそうです。
数を増やすことよりも、長く支援を続けられる仲間を増やすこと。
それが結果として、親子が選べる住まいを増やすことにつながります。
マザーポートという名前のように、安心して立ち寄れる「港」でありたい

取材の中で「マザーポートは利用する母親にとって、どのような存在でありたいですか?」と伺いました。
秋山様が答えたのは、サービス名にもなっている「港」という言葉でした。
船が航海の途中で港に入り、安心して停泊し、また次の場所へ向かっていくように。
生活に大きな変化が起きたとき、まず安心して立ち寄ることができる。
そして住まいを確保し、仕事や子育てなどの生活を少しずつ整え、再び自分たちの人生を進んでいく。
マザーポートは、そんな生活を立て直すための拠点でありたいと考えています。
さらに秋山様は、母親と子どもの関係についても話してくださいました。
母親が安心して生活でき、気持ちが安定すること。そして、その母親自身が今度は子どもにとって安心して戻れる「港」のような存在になること。
マザーポートという名前には、住まいを紹介するだけではない、そんな想いも込められています。
目指すのは「マザーポートが必要なくなる社会」
今後について秋山様が話したのは、サービスをどこまでも大きくすることだけではありませんでした。
直近では、居住支援に使命感を持って取り組む事業者や、良好な状態の住宅を低廉な価格などで提供できる所有者とのつながりを増やし、母子家庭が選べる住まいを増やしていくことを目指しています。
一方で、民間の活動だけで住まいの問題を支え続けることには限界があります。
そのため、現場で起きていることを行政へ届け、制度が実際に必要としている人の支援につながるよう働きかけることも、全国ひとり親居住支援機構の重要な活動です。
そして長期的に目指しているのは、「マザーポートのようなサービスを必要としない社会」です。
離婚をしたから。
ひとり親になったから。
収入が一時的に安定していないから。
そうした理由で住まいの選択肢が極端に狭くなることなく、必要なときに安心して次の生活を選べる。
特別な支援がなくても、誰もが当たり前に住まいを確保できる社会になれば、マザーポートの役割そのものが必要なくなるかもしれません。
サービスを続けながら、そのサービスが必要なくなる未来を目指す。
そこに、マザーポートが居住支援に取り組み続ける理由があります。
今回の取材で特に印象に残ったのは、「住まいの選択肢を増やす」という考え方でした。
住まいは、ただ寝起きするための場所ではありません。子どもと安心して過ごし、仕事へ行き、学校や保育園へ通い、これからの生活を考えていくための土台でもあります。
離婚前後など生活が大きく変わるときに、「住める場所がない」ことが次の一歩を難しくしてしまう場合があります。そんなとき、自分たちの状況を理解してくれる住まいがあると知っていること自体が、一つの選択肢になるのだと感じました。
そして、マザーポートが最終的に目指しているのは、こうした特別な支援を必要としなくても、誰もが安心して住まいを選べる社会です。住まいから親子の生活を考えることの大切さを、改めて感じた取材でした。
- 離婚前後などで、子どもとの新しい住まいを探しているママ
- 収入や就業状況などから、一般的な賃貸住宅を借りられるか不安を感じているママ
- シングルマザー向けのシェアハウス・アパート・一戸建てなどの選択肢を知りたいママ
- ひとり親家庭の住まいや居住支援について知っておきたいママ
- 子どもと安心して新しい生活を始めるための情報を探しているママ
取材情報
取材日: 2026年8月18日
取材先:全国ひとり親居住支援機構
取材ご協力: 代表理事 秋山 怜史 様
紹介サービス: マザーポート
公式サイト: https://motherport.net/






