
シングルマザーの「働く」と「暮らす」を支えるHAGAIとは?生活支援から仕事づくりまでを取材
子育てをしながら働くこと。
ただでさえ時間に追われやすい毎日の中で、一人で仕事や家計、子どものことまで考え続けるのは簡単ではありません。
「子どもとの時間を大切にしたい。でも、収入も必要」
「在宅で働きたいけれど、何から始めればいいのかわからない」
「生活や将来について相談できる人がほしい」
そんなシングルマザーの暮らしや働き方を支えているのが、株式会社Geeksが取り組む「HAGAI(はぐあい)」です。
HAGAIでは、食料品・日用品の提供や専門家への相談だけでなく、学びや仕事につながる機会づくりにも取り組んでいます。
今回はHAGAIの西野入様に、活動を始めた背景やシングルマザーが抱えている悩み、具体的な取り組み、そしてHAGAIが目指す未来についてお話を伺いました。
目次[非表示]
シングルマザーの暮らし・学び・仕事を支える「HAGAI」とは?
HAGAIは、シングルマザーとその子どもたちを支える取り組みとして、2023年10月にスタートしました。
取材時点では、北海道から沖縄まで全国から参加者が集まっているといいます。
活動内容は一つではありません。
食料品や日用品の提供をはじめ、弁護士への相談、カウンセリング、税理士による簿記・会計講座、座談会、専門家によるセミナーなど、さまざまな支援を無料で提供しています。
さらに特徴的なのが、生活や相談の支援だけで終わらず、「働く」につながる取り組みも行っていることです。
企業から事務・経理・SNS運用・動画編集・広報などの業務をチームで受託するほか、税理士法人向けのバックオフィス支援、家事代行なども展開しています。
「今困っていること」への支援と、その先にある「これからどう働くか」を切り離さずに考えているのが、HAGAIの取り組みです。
母の「父親を奪ってごめんね」という言葉から始まったHAGAI
HAGAIの原点には、西野入様自身の経験があります。
西野入様は母子家庭で育ち、経済的な苦労なども経験してきたそうです。
一方で、お母様の姿から前向きに生きることや、感謝することの大切さも学んできたと話します。
大きな転機になったのは、経営者研修をきっかけに、お母様へこれまでの感謝を伝えたときのことでした。
その際、お母様から返ってきたのが、
「あなたから父親を奪ってごめんね」
という言葉だったそうです。
泣きながらそう話すお母様を見て、西野入様は強い悔しさを感じたと振り返ります。
シングルマザーであることや、母子家庭で育つことを、親子のどちらかが負い目として抱えるのではなく、お互いに「この親子でよかった」と思えるようにしたい。
そんな思いが、HAGAIを立ち上げる大きな原動力になりました。
「時間・収入・心の余裕がない」シングルマザーが抱える悩み

HAGAIに参加しているシングルマザーの中では、35〜44歳の方が最も多く、次いで20代後半〜30代前半、45〜50代前半の方が多いといいます。
子どもの年齢や住んでいる地域はさまざまですが、共通して見えてくる課題があると西野入様は話します。
それが、時間・収入、そして心の余裕の不足です。
特に多く寄せられるのが、
「子どもと過ごしながら、在宅で収入を得られるようになりたい」
という相談です。
子どもが不登校で家にいるため外へ働きに出にくい家庭もあれば、自身や子どもの体調などの事情によって、決まった時間に外で働くことが難しい家庭もあります。
だからこそ、在宅でも活用できるスキルを身につけ、自分の状況に合った働き方を見つけたいというニーズがあるそうです。
「働きたい」という気持ちがあっても、子育てや家庭の状況によって働ける時間や場所が限られる。
HAGAIでは、そうした一人ひとりの状況を踏まえながら、生活だけでなく働き方についても選択肢をつくろうとしています。
相談するだけで終わらない。「学ぶ」から「働く」までをつなげる
HAGAIの特徴の一つが、学びと仕事をつなげようとしていることです。
例えば、税理士による簿記や会計の講座を開催し、スキルを身につける機会を提供しています。
その一方で、企業から事務や経理、SNS運用、動画編集、広報などの仕事を受託し、チームで業務を行う仕組みも展開しています。
つまり、
相談する。
学ぶ。
スキルを身につける。
そして、仕事につなげる。
という流れをつくろうとしているのです。
子育てをしながら新しいスキルを身につけることは、時間的にも精神的にも簡単なことではありません。
HAGAIでは、時間がないことを理由に一歩を踏み出せない人も多いという現状を踏まえ、行動するための考え方を学ぶ機会についても整備を進めているといいます。
ただ支援を受けるだけではなく、将来的に自分自身で働き方や暮らしを選べるようになること。
そこまでを見据えている点が、HAGAIの取り組みの一つの特徴です。
必要なものは人それぞれ。自分に合った支援を選べる場所に

HAGAIには複数の取り組みがありますが、参加者全員がすべてを利用しているわけではありません。
西野入様によると、実際には自分が必要としているサービスだけを利用している人も多いそうです。
今は食料品や日用品の支援が必要な人。
専門家へ相談したい人。
新しいスキルを身につけたい人。
在宅でできる仕事につながりたい人。
同じシングルマザーであっても、置かれている状況や必要としているものは異なります。
もちろん、複数のサービスを利用する人もいます。
大切なのは、「シングルマザーだからこの支援が必要」と一括りにするのではなく、その人が今必要としている選択肢へつながれることなのかもしれません。
目指すのは、親子が自分たちの未来を自由に選べる社会
西野入様が取材の中で繰り返し話していたのが、シングルマザーとその子どもたちが、未来を自由に選択できる環境をつくりたいという思いです。
子どもを育てることは、生活の中で大きな割合を占めます。
特に一人で子育てを担っている場合、時間もお金も、まず子どものために使うことが多くなるでしょう。
しかしHAGAIが目指しているのは、母親自身も「自分の好きなこと」や「やってみたいこと」に時間やお金を使える状態です。
そして子どもについても、家庭の経済状況などによって、進学や挑戦の機会を諦めなくてよい環境を目指しています。
そのためには、今を支えるだけでなく、収入や働き方そのものについても考えていく必要があります。
取材では、母子世帯の平均就労収入として236万円という数字にも触れ、将来的にはHAGAIに関わる1万人のシングルマザーが、一般世帯に近い水準の報酬を得られる環境をつくることを目標としていると話していました。

会員1万人、託児付きの人材紹介、そして親子を支える拠点へ
HAGAIでは、今後に向けたさまざまな構想も描いています。
取材時点では約600人という会員を1万人へ広げることを目指し、広報活動などにも力を入れていく予定だといいます。
さらにその先には、送迎や託児サービスを組み合わせた人材紹介事業も構想しています。
子どもの発熱による急な休みや早退、残業が難しいことなどは、子育て中の人が働くうえで直面しやすい問題です。
そうした事情も含めて働ける仕組みをつくることで、企業側と働く側の双方が安心できる環境を目指しています。
また、5年後を目標に、名古屋に衣食住・教育・託児などを包括的に支える拠点をつくる構想もあるそうです。
さらに長期的には、活動をより広く社会へ届けていきたいという大きな目標も語られました。
いずれも今後の計画・構想ではありますが、現在の生活支援だけではなく、子育て、仕事、教育、暮らしを一体として考えていることが、HAGAIの描く未来からも伝わってきます。
シングルマザーへ。「自分と子どもの未来」を考えるきっかけに
最後に、MamaCollegeを読んでいるシングルマザーへ向けて、西野入様からメッセージをいただきました。
西野入様が伝えたかったのは、子どもを育てていることそのものの尊さと、子どもの未来をより豊かなものにするために、自分自身が何をできるのかを考えてほしいということでした。
そして、今の状況を変えたい、新しいことへ挑戦したいと考えている人に対しては、HAGAIとして支えていきたいと話します。
子育てをしていると、自分のことは後回しになってしまうことがあります。
それでも、母親自身が学ぶこと、働くこと、誰かに相談すること、新しいつながりを持つことは、親子のこれからを考えるうえで一つの選択肢になります。
すべてを一人で変えようとする必要はありません。
まずは「こんな場所がある」「こんな働き方や支援もある」と知ることから、次の選択肢が見えてくることもあります。
今回の取材で印象的だったのは、HAGAIが「今困っていることへの支援」と「その先の自立や働き方」を一続きのものとして考えていることでした。
シングルマザーと一言でいっても、必要としているものは一人ひとり違います。生活を支えるものが必要な時期もあれば、誰かへの相談、学び直し、仕事につながる機会が必要な時期もあります。
子育てをしながら新しい一歩を踏み出すことは、簡単ではありません。だからこそ、すべてを自分だけで解決するのではなく、必要なときに外部のサービスやコミュニティを頼ることも選択肢の一つです。
HAGAIのような取り組みを知ることが、「今の自分に必要なものは何だろう」と、自分と子どものこれからを考えるきっかけになればと思います。
- シングルマザーとして、生活や子育てについて相談できる場所を探している方
- 子どもとの時間を確保しながら働ける方法を考えている方
- 在宅ワークにつながるスキルや仕事に興味がある方
- 一人で抱え込まず、同じような環境の人や専門家とつながりたい方
- 今後の働き方や親子の将来について、新しい選択肢を知りたい方
取材情報
取材日: 2026年9月3日
取材先:株式会社Geeks
取材ご協力:代表 西野入 様
紹介サービス: HAGAI(はぐあい)
公式サイト: https://haguai.jp/






